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杜氏:広島の酒造り安芸津杜氏:YK35仕込み

広島杜氏

広島杜氏の技

杜氏とは、蔵の「造り」を束ねる、酒造りの「長」です

明治30年に「軟水醸造法」を開発した安芸津の三浦仙三郎。画期的な醸造法を確立した三浦氏は、同時に酒造りにおいて、杜氏の育成の必要性を強く感じた。

そこで三津村(今の安芸津)の杜氏を中心とした、杜氏組合を発足させた。これが、「広島杜氏」と呼ばれる職人の集まりです。広島杜氏が今も「安芸津杜氏」とも呼ばれるのは、そのためです。

杜氏はかつての日本酒の全盛期には、職人的な仕事の中でも多くの人たちの憧れの存在だった。蔵が雇用する条件もよく、また、杜氏には農業を本業とする人が多かったため、秋の刈り入れを終えて蔵に入る杜氏の仕事は、農閑期にいい稼ぎになることでも魅力的な仕事でした。

しかし現在は農業自体の衰退や職業の多様化もあって、杜氏の後継者がなかなか育ちにくい時代になっておりましす。

吟醸酒の発祥の地・広島

広島の杜氏たちが伝統を守り抜いてきた広島の酒、つまり広島杜氏は、その確かな技術で全国からの目標の存在でした。

昭和50年代に、広島杜氏の手によって確立された技術。それが、「YK35仕込み」と呼ばれるものです。Yは酒米の「山田錦」のY。Kは「熊本酵母」、そして、35は精米歩合35%を示すものです。つまり、「山田錦を35%まで精米して、香りの豊かな熊本酵母で仕込んだ大吟醸酒」だったのです。

それまで、精白を35%にまでもっていくという考え方などなかった時だけに、広島が造った「吟醸酒」の概念は、すぐに全国的なブームになった。当時、広島の考えた吟醸酒は、鑑評会のためだけに造る、特別な酒だった。玄米をぜいたくに削り込むわけだから、当然コストはかさむ。そのせいもあった。

ところが一部の他県の蔵が、広島吟醸酒の研究を重ねて一般市販用に売り出したのです。「従来の日本酒よりも香り豊かでフルーティー」と広くメディアで紹介されたこともあり、全国的な吟醸酒ブームとなりました。

全国どの蔵も吟醸酒は当たり前、という時代が到来。広島が他に先がけてやってきた吟醸造りの技術は、すぐに他県も同様のものを手に入れることになったのです。さらに広島にとって逆風になったのは、世の中の嗜好が「淡麗辛口」に流れていったことだ。濃醇でふくよかな味わいが特徴だった広島の酒が、どちらかというと遠く置かれるようになったのです。

だが近年、ここにきて次第に日本酒の嗜好にも微妙な変化が表れてきつつある。あっさりとした水のような口あたりではなく、しっかりとした味わいを持ったふくよかな風味が、都会でも好まれるようになりつつある。

広島ならではの個性を大事に。そんな思いとともに培ってきたここ数年が、これから生きてくる時代となること。広島の酒をじっくりと味わいながら、期待に胸を膨らませたいところです。